Harry Oya氏のMAX考察
Harry Oya氏が長年蓄積したMAXエンジンに関する考察をFecebookで公開されております。

ROTAX FR125 MAX情報
「ROTAX FR125MAXを安定的に速く走らせる為の基本知識、キャブセットの考え方、走行テスト方法、データロガーの確認方法、
改善項目と改善方法などの情報をupしていきます。」

下記はそれを許可を得て転載したものです、
皆様のMAXエンジンのセットアップに大変有益になるものと思いますので、一読を推薦いたします。

Last update 2024.02.28



最初の情報としてご存知の人もいると思いますが、MAXエンジンに採用されている点火時期特性です。
この点火時期特性が、イコール コンディションに大きく寄与してます。(不正防止)
この特性を記憶しておいてください。
詳しくはおいおい記載していきます。



MAXの点火時期特性。
一般的な2ストロークと違い、この点火時期特性が、MAXのキャブレターセッティングを複雑にしています。
要するに、進角した12,700rpm以上はメンジェットを大きくしないと走らなくなります。
メンジェットを大きくすることで、例えば瑞浪の1コーナーを過ぎてエンジンの回転数がさらに上がり、14,000rpnは軽く超えます。
ただし、この時に重要になるのが油面の高さです。



点火時期特性の余談。
EVO以前のエンジンは、走行中のエンジンから失火音を聞いたことがあると思いますが、空燃比が薄いと進角したタイミングで音が発生します。
ジュニアエンジンの場合、空燃比が薄いと進角出来ずに失火が続き、パスパスと音を立てて走っているカートも見かけました。
EVO以降、あまり失火音を聞かなくなりました。これはキャプの仕様が変更されたためです。
岡山国際サーキットで実施されているスーパーカートSK3クラスは、点火特性上、このエンジン回転を超える事はありません。



特殊な点火特性をご理解いただけたでしょうか?
キャブレターセットに入る前に、重要なのがリードバルブです。
この働きを理解すれば、低速用エンジン高速用エンジンどちらでも自由にセットアップできます。
基本は、メーカー指定のリードベンを取り付け、リードベンガイドの幅を合わせるだけです。
ただリードベンの厚さはばらつきが多い、よって、厚さを測って取り付ける必要があります。
詳しくは2回に分けて開示します。




リードバルブ編。
結論から言いますと、リードペンの厚さは0.62mmが万能です。
マイクロメーターで、部分ごとに3カ所測定して選んでください。リードベンガイドは、走行中の最高エンジン回転から開口幅を決めて下さい。
リードベンの厚さが0.62mmあれば開口幅は21ミリでも22ミリでも問題ありません。
0.55mmなら、ガイド幅は19ミリで行けるでしょう。
リードベンが薄いと高速型になりますが、ベンのチャタリングが発生しやすくなります。
リードベンの交換時期は、20時間以内で交換してください。
瑞浪1コーナーを過ぎてから、エンジン音がビビった様な音になると話を聞きます。それはリードベンが暴れてるからです。
その時はリードベンガイドの幅を狭くして、暴れを抑えてください。21mmなら19mmに合わせる。
ビビリ音は消えて、エンジン回転はさらに上がるでしょう。
逆に、エンジン回転が上がらない時は、ガイド幅を増やしてください。
その後、キャブレターのセッティングができます。




リードバルブ編-2
エンジン高速域でどういうことが起きるかを簡単に説明します。
ミズナミ走行データです。
写真の赤い線は、14,800rpmリミッターに達した為、エンジン回転が下がっています。
緑線は14,400rpm辺りで、リードベンがチャタリングを起こしています。
このように、データロガーのデータをパソコンで見れば一目瞭然です。
PCを有効に活用しましょう。
対策効果も正確に見ることができます。
赤色線は、リミッター回転数14,800rpmを超えた為、スパークが止まり、エンジン回転数が落ちてます。ノイズではありません。

余談ですが、他のエンジンではリードベンの仕様も年々進化しています。


エンジン回転数全域をカバーできる仕様に変更されてます。


さらに、きめ細かく全エンジン回転数域をカバーできる仕様になってます。



次のステップは、キャブレターのセットアップ編ですが、詳しい内容にすると読むのに疲れるでしょうから、リードバルブ編並みのレベルを考えています。
キャブレターの基本点検及び抑えるべき項目、気象条件とセットアップ方法、トラブル内容と対応などを不定期でアップします。



キャブレターのセットアップ編-1
これも結論から説明します。
前提条件は、エンジン箱だし及びOH後の慣らしが十分行えていることと、
キャブレターは諸元通りであり、燃料ポンプガスケット類は交換されていること、
ノイズBox、エアーベンドは正しく取り付けられていること。
フレームのセットができていること。
この状態であれば、現在の気候であれば油面は23.8~24.0mm、ニードルジェットのクリップ位置が上から4段目、
MJは#124~5、エアーADJは1/2~1.0回転、スロットルは後ろ全開を推奨します。(シニア、マスタークラス)
このセットで速く走れない場合は、どこかに問題がある可能性があります。
最近のキャブレターの加工精度及びJet類の精度は良いとは言えません。
依って、全て分解して、ピンゲージでの確認が必要です。





補足情報です。
キャブレターのセットは色々な条件に左右されます。
例えば、MAXではノイズBoxの内圧(負圧)が変わることで、吸入空気量が変化します。
走行中に体を前傾するだけで、ノイズBox外の空気の流れが変わり(流速が落ちる)、ノイズBox内の内圧が上がり(負圧が加圧側に変化する)、
そのことでキャブの吸入空気量が増えて、空燃比が薄い方向に変化します。
空燃比を薄めにセットしたカートが、ストレートで前車をパスするために体を前傾すると、さらに薄くなり失火音が出ます。
もちろん、MAXはパワーダウンしてパスすることが出来なくなります。
燃焼が早くなり、排気温度も上昇します。
雨カバーも同様です。
わかりにくいかな?
この症状を利用することができます。




キャブセットの補足の補足です。もっとも重要な内容です。
おさらい。まずは燃料の供給を安定させる。
エアーフィルターは常に同一条件にする。
次に重要なのが、エアーベントの切り欠き方向位置です。
あまり気にしていない人がいますが、MAXでは重要なパーツです。
走行中の切り欠き方向で油面の高さが変わります。
なぜ?ここは考えてください。
切り欠きは常に上方向で合わせる。
常に単独走行するとか、数台でバトルするなど、レースではありうることです。
要するに、スリップ状態と単独走行では、空燃比が変わるということです。
単独走行では高速エンジン回転は上がるが、前車がいると高速エンジン回転が上がらないのは今まで説明してきたのが要因です。
対策は?そうです。
高速域は空燃比を濃いめにすることです。
瑞浪の1コーナー後、スリップから前車パスは簡単に出来るでしょう。
では、単独走行になったらドライバーはどうすればいいか?
答えは簡単!
今までの内容を理解して、レースを考慮したセッティングが重要になります。



キャブレターセット編-2
エアースクリュ調整ですが、レギュレーションによりアイドル系はジェットの変更ができません。
そこで、エアースクリュをどう合わせるか?
冬の時期であれば、アイドルジェットインサートを52番ぐらいを使いたいところです。
低速からの立ち上がり変わります。
特に混戦でエンジン回転を下げてしまったり、カートをスライドさせたときのピックアップに影響します。
では、どうするかですが、エアースクリュの開度を全閉から半回転だけ開けます。
要するに、エアー量を少なくするのです。
これで上記条件下を改善できます。
試してください。感覚の良いドライバーであれば変化を感じられます。

青色の部分が空気が入っていきます。エアアジャストの部分でエアの量を調整します。



補足 キャブレターが不調を起こす要因。
1. ニードルバルブ。
ニードルバルを交換せずに、長く使うと2つの不具合が出てきます。
センターのシャフトが傷つき、動きが悪くなる。
ラバー部分が劣化して、貼付を起こす。
これらの不具合が発生すると、フロート内に入るガソリンの量が安定しなくなります。
油面が下がり、空燃費が薄くなって、エンジンに不具合を生じることもあります。
できれば2レース毎か3レース毎に交換しましょう。
交換するときの注意点ですが、ガスケットの厚みがいろいろあります。
交換した時は油面調整をやりましょう。

2. フロートのトラブル。
フロートの中にガソリンが入ることがあります。
フロートが重くなり、油面が 上がり、空燃比が濃くなります。

3. 燃料ストレーナー。
キャブ内に1カ所ストレーナーが付いてます。掃除を怠るとゴミが溜まっている場合があり、燃料供給量が少なくなり、油面が下がります。
走行前は点検するようにしましょう。




余談です。KZやROKシフター仕様の話し。
これらのクラスは、やはりキャブレターの油面高さ調整とガソリン収支の安定化が必要です。
そのために、吐出量の多い燃料ポンプを使い、余分な燃料は、燃料タンクにリターンします。そのリターン量の調整にオリフィスやジェット類を使ったりします。
ここでは調整式バルブを紹介します。
これは非常に有効で、急な雨でもジェットの変更せずにリターン量を増やすだけで、空燃費を薄くできますシフターには有効なシステムです。


https://www.facebook.com/100013482818416/videos/1291483952254225/?idorvanity=1207889672634503 へのリンク



MAXのキャブレターのセットアップ編
今まで説明したことを理解していただければ、後は簡単。
燃料供給、リードバルブ、ベントチューブ、アイドル系、ニードルクリップ、油面、これらが今まで説明した内容に従っていれば、後はMJを合わせるだけ。
では、ジェットをどのように合わしていくかですが、例えば、瑞浪の1コーナー過ぎてから、さらにエンジン回転が上がるまでMJを大きくします。
さらに、4コーナーではトルク感が出るまでMJと大きくしていきます。
これでほぼキャブのセッティングは出来上がります。
後は外気温、湿度など季節に合わせてセッティングを行えば、どの季節でも速く走ることができます。
前にも話しましたが、 MAXは大気圧や雨(雨カバー付き)の場合でもあまり気にする必要はありません。
データロガのデータをパソコンにダウンロードして、それぞれを比較してください。アプリはoff Camber dataが良さそうです。





余談です。MAXエンジンの余談。
今まで説明してきたことを総括すると、MAXエンジンの特徴(設計意図)は、全てが計算し尽された点火時期特性とキャブレターにあると言っても過言でない。
世界中の気候や不正防止(不正効果は出ない)の設計意図が織り込まれています。シリンダーのロット違いも全く影響されません。
マフラーもベストな設計値になっています。
依って、正しくメンテナンスされたエンジンは性能差が出ません。
もし、違いがあると感じるのであれば、今まで説明してきた内容を理解して、正しくメンテナンスしてください。



排気バルブ編です。
現在のEVOは、マニュアル通りに正しく組付けされている場合は、特に問題は発生しません。
スプリングや調整ねじを気にする人がいますが、気にする必要はありません。
アースを一本(7,900rpm)にするか、二本(7,600rpm)にするかは、コースとドライバーの好みで決めれば良いと思いますが、二本アースをお勧めします。



マフラー編です。
MAXのエンジン性能がベストになるように設計されています。
サイズばらつきはありますが、点火特性で吸収されます。
いろいろなマフラーを試しましたが、結果的には現在のマフラーがベストと思われます。
マフラーに関しては、既に各自でメンテナンスされてるように、通常のメンテナンスで特に支障はありません。
ただ、消音材のグラスウールは早めに交換してください。 エンジン側によく穴が開きます。スチールマットをつけるのも効果があるでしょう。
グラスウールに穴が開くと、どのような変化があるかといいますと、少しエンジンがピーキーになってきます。
新しい時は、フラットなエンジン特性になります。
マフラーの取り付け方法は、写真の通り後方へまっすぐに合わせます。また傾斜角ですが、排気ソケットに対して上下の隙間が同じになるように合わせます。





セルモーターが回らない。特別編。
スターターボタンを押しても、セルモーターが回ってくれないトラブルを経験した人もいると思います。
原因の多くは、スイッチの接点にカーボンが堆積した為です。
分解して掃除をしておきましょう。
分解は、部品をなくさないように慎重に行ってください。






エンジン関連の情報
はじめに、エンジンのパフォーマンスを最大限に発揮するためには、正しいナンスを行う必要があります。
箱出しエンジンにしろ、1度分解して各部の寸法測定、各部クリアランスの調整、必要ならピストンの交換、クランクバランス取り、
オイルシールのフリクションが高ければ、ユーズドオイルシールに交換等などのメンテを行うことで、エンジン鳴らし時間の短縮ができ、
それだけで充分戦闘力が上がります。
次回からスキッシュクリアランス、ピストンクリアランスの解説を行います。 添付資料は旧型MAXエンジンのメンテナンスシートです。



スキッシュクリアランス編
RMCではスキッシュクリアランスの規制があります。
本来の2ストロークは、レギュレーションで決まりがない場合は0.65〜0.70mmに調整しますが、
RMCでは規則があり、平均値で1.0mm以上に調整します。
スキッシュクリアランスの違いによって、明らかに出力の違いが出ます。
RMC場合は、整備インターバルが10時間を超える場合は、1.10〜1.15mmが無難なところです。
夏場と冬場で変更することも必要ないでしょう。
1.01mmと1.10mmの比較では、前に説明したように、点火特性の影響でエンジン性能に差は出てきません。
RMCでスキッシュクリアランスの規制に至った理由は、クリアランスを狭くすれば狭くするほど、
キャブレターのセッティングが複雑になり、デトネーショントラブルも発生するためです。



シリンダーとピストンのクリアランス編
指定オイルを使用したMAXのシリンダーとピストンのクリアランスは、秋/春共0.08〜0.09mmが、
もっともエンジンのパフォーマンスを発揮出来るでしょう。
夏場は水温が高くなるので、0.07mmが良さそうです。但し、キャブレターセットを薄めにセットする場合は、
ガソリンとオイルの混合比を0.2%増やすか、0.08mmが良さそうです。
クリアランスの評価は、エンジンダイナモでも難しい。何故なら、ピストンバランスも影響するからです。
ピストンリング上部とスカート下部が光っているピストンはバランスが悪く、
上下運動で、ピストンが振れがでています。(写真)
この様なピストンは要注意です。ピストンリングの張力も管理出来ればベストでしょう。(割愛します)