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ROTAXクラスから、Formula Renault 2.0 ALPS シリーズにステップアップすることになった、
笹原選手を見学にイタリア/Vallelungaサーキット及びEuronova Racingを訪れヨーロッパの
カートからジュニアフォーミュラへの現状を見聞してきましたので、F1ドライバーを目指しレース活動を
頑張っているドライバーの参考になると思いそれを記したいと思います。

まず、ヨーロッパでのF1への流れですが、カートからジュニア/入門フォーミュラーでもまれて、
ミドルフォーミュラーそれから、F1といういうものですが、
現状は、カートからすぐにFormula Renault 2.0(以下 FR2.0)又は、カートと入門フォーミュラーを並行後FR2.0、
その後、Formula Renault3.5、AutoGP、GP2/3を経験しF1へという流れが大きいようで、
FR2.0はフォーミュラの初期では外せないカテゴリーになっているようです。
Kimi Raikkonen選手みたいにFR2.0からいきなりF1というステップも今後も出てくる可能性があります。
ルノーの冠ですが、各F1チームの育成ドライバー達がこぞって出場していることから、
熾烈な篩い落としのカテゴリーとも言えます、まさにF1への登竜門です。
参戦2-3年目の選手も多く、この篩い分けに残った選手がF1へ進む可能性はかなり高くなります。
この間、篩い分けに残りつつスポンサー活動や交渉スキル等を学ぶことで将来への地盤を固めていきます。
今後、日本メーカーが参戦するから日本人は、特別なルートが用意されると短絡的に考えるのは早計で、
過去の先人達もヨーロッパの洗礼を受けたわけで、この熾烈な篩い分けに入り生き残るか、
篩い分けに残った猛者達と対等に戦うことを要求されるわけで、同等の実力は必須条件です。

FR2.0の車両ですが、2Lのルノースポール製のエンジンにワンメイクの車体を使用します、
エンジンは、封印されており、ルノーが全て管理してエンジン差は無いそうです、
7速パドルシフトでファイナルギアのみ交換可、クラッチはスタート時使用するのみで走行中は必要無し、
F1同様、左足ブレーキも多用するようです。
全く車を運転したことがなかった笹原選手が、スタートさえすればすぐに対応出来た理由が判りました。

車体は、Tatuus製カーボンモノコックで、完全オリジナルを使用しなければならず、改造不可
性能に影響しない小さな部品は、交換・補修はOKですが、
破損した主要部品を補修したりする場合は、メーカーまで送り返さなければならないそうです。
あれ? Rotax Grand Finalのルールに酷似しています。
昨年、Nyck De Vriesの父親と話したとき、
「フォーミュラールノーは、フォーミュラーのRotax!だ」と言ったのを思い出しました。
しかし、サスペンション、ウイング、スタビライザー等のミリ単位の調整、タイヤの使い方、レース戦略、
フォーミュラの基本が全て学べるようになっています。
レース距離が、25分+1周なので、実質30分以上の集中力が要求されます。

シリーズ概要ですが、以前は、FR2.0シリーズが各国で行なわれておりましたが、
現在は、イタリアのサーキットを中心に転戦するALPS
ドイツ以北のサーキットを転戦するNorthern European Cup(NEC)
World Series by Renaultと一緒に転戦する、Eurocap FR2.0 に大別され
前者2つのシリーズは、テストの制限はありませんが、
Eurocupは、公式テスト以外でのテストは禁止されております
そのため、Eurocupを戦う選手がALPS/NECの方に練習をかねて出場してきます。
チャンピオンシップに影響しないよう違うシリーズへのエントリー数も制限されているようです。

参加台数ですが、この日のALPSには36台、Hockenheimで同日開催されたNECにも38台が出場しており、
カートの最大出走台数より多い数のフォーミュラーカーがレースをするという、かなり激しい世界です。
Vallelungaでは、後方グリッドの選手は、最終コーナーにまで及び、スタートシグナルが見えずに、
前の選手がスタートしたらスタートするといった笑えない状況だったそうです。
Eurocupは、40台を越えるエントリーを集めているようです。

ALPSシリーズは、あまりROTAXが盛んでないイタリア中心のためか、私の見識不足か、
ROTAXからFR2.0の選手は、笹原選手だけのようでしたが、Grand Finalに出場していたインドの選手や
日本のRMCを走っていたAndrew Tan選手が出場していていずれもROTAXは良い経験になったそうです。

同日、開催されたNECのリザルトをチェックしたらビックリ!

左からEd Brand(3位)、笹原(1位)、Matt Parry(2位)、Mikka Laiho(4位)
上の写真は、笹原選手が2009年GrandFinalでジュニアチャンピオンになったとき、
上位グリッドの4人で撮ったときのものです(13-14歳なのでみんなまだ幼い)
NECのレース1-4位、レース2-3位、レース3-3位のMatt Parryは、あの時のMatt Parryです
Mikka Laihoも前週のEuroChallenge DD2クラスで優勝した後、そのままNECに出場していたようです、
もう少しリザルトを見てみると、
昨年までEuroChallenge Seniorクラスを走っていた、Jack Aitkenもしっかりレース1-5位です、
彼も2010年GrandFinal Juniorクラス Pre-Final1位でした。
CIKレースで上位を走っていた強者がFR2.0でも上位を走っていますが、
それを押しのけてROTAX出身の選手が進出してきているのもまた事実です。
昨年、EuroChallenge Seniorクラス上位だった数名がフォーミュラに上がるという話も聞くので、
近い将来、ROTAX出身選手が、ジュニアフォーミュラの一大勢力になるのは確実のようです。
ほぼイコールコンディションのROTAXクラスで数多くのレースでもまれていく間に、速さだけでなく、
レース戦略、激戦の中でも生き残っていくタフさが培われ、それがフォーミュラに進んだときに
大きな武器になっているようです。

今回、EuronovaRacingよりROTAXシリーズ上位の方には、シーズンオフのテストプログラムを
提供しましょうかとの提案を頂いております。
過去の在籍ドライバーのロガーデータと比較することで、
現在の正確な実力から数年先のある程度の予想まで提示してもらえるとのことです。
F1を夢としてとらえて頑張っている選手には、現実としてとらえる良い機会ではないかと思います。